ビューティークイーン・オブ・リーナン

シアターΧ

2004.11.20(土)19:00

作：マーティン・マクドナー 演出：岸田良二

キャスト： モーリーン...立石涼子 マグ...有田麻里 パト...石田登星 レイ...佐藤銀平

物語：アイルランドの西の果てリーナン。40歳になるモーリーンは母親マグの面倒を見て毎日を過ごしている。結婚した姉たちは母を嫌ってこの家には寄りつかない。ある時、幼なじみのパトがロンドンから休暇で戻ってきていると弟のレイから聞き、普段は顔を出さないパーティーに行くことにする。マグは気に入らないようだが。

マクドナーという人は、何という作品を書く人なのだろう。これを二十代前半に書き上げた作品だとは思えない完成度の高さ。舞台はリーナンというアイルランドの片田舎。何も起きない、何も変わることのない日常の中で、毎日繰り広げられるマグとモーリーン母娘のしたたかな戦い。そこに愛はあったのだろうけれど、もう既にすり切れてボロ雑巾のようになっている。モーリーンには唯一で最後かもしれない逃げ道があった。ロンドンに働きに出ている幼なじみのパト。でもこの小さな幸せが、モーリーンを悲劇へと追いつめていく。マクドナー、やっぱり底意地が悪いわ(^^;; 。でもこの感覚が段々快感になってくるところが怖いf^^;。パトとその弟レイを巻き込んで、物語はどんどん異常な雰囲気を帯びてくる。

一軒家の台所兼居間が舞台というアイルランドの典型的古典劇を題材にして、オニールばりの家族の葛藤劇を描く。マクドナーはその古い題材を笑いと狂気とサスペンスで覆い、この題材は古典ではなく現在にも通ずると言っているのかもしれない。現在でもこういう葛藤はあるのだと。ブラックな笑いと、そこに見え隠れする殺意。いつか悲劇が訪れるのだろうか、、、という不安感。マクドナーが込めた毒がどんどん効いてくる。そしてラスト、モーリーンが抱え込んでしまった孤独の重さと深さを思うと、静かな狂気のこもった余韻が残るのでした。

役者もこの深い戯曲に負けない芝居を見せてくれます。モーリーンの立石涼子の陰影のある演技と艶っぽさ。可愛くて怖いモーリーンを熱演。母親マグを演じる有田麻里の枯れた演技にも拍手。終演後のティーチ・インで「自分には似合わない役」と言ってましたが、そんなことなかった。パトの石田登星。振り回され演技が素直で良い。パトはこの芝居の中では一番マトモな人かも(^^;; 。しかしあまりにストレート過ぎて、ひねくれた人じゃないと感情移入出来なくなっている自分がいたりする。怖すぎだ＞マクドナー。。。レイを演じる佐藤銀平。斜に構えた若者らしい若者で良かったけれど、台詞回しとかもう一歩かも。

（★★★★☆）