『ストーンズ・イン・ヒズ・ポケッツ』

ゴールデン劇場

２００１．４．１５（日）１5：00

作：マリー・ジョーンズ 演出：イアン・マッキルヒニー

キャスト： チャーリー...コンレス・ヒル ジェイク...ショーン・カンピオン

物語：アイルランドの小さな町にハリウッド映画が撮影にやってくる。エキストラとして雇われた地元の人たちの中に、チャーリーとジェイクもいた。彼らが体験する様々な出来事と、村人の様子、そして彼らと映画スタッフとの関わり合いを描いていく。

この年観たブロードウェイの芝居で一番気に入った作品です。凄く期待して観に行って、それ以上のものを見せてくれたのでインパクトも大きかった。ダブリンで初演され、ロンドンのフリンジからウエストエンドへと移動して現在も上演中の作品。最大の見所は、２人の役者が１５の役を演じ分ける所だと思うのですが、この演じ分けがひっじょーーーーに素晴らしいのです。もう職人芸の粋まで達してる。舞台セットも小道具も殆ど無く、衣装替えも殆どしないにも係わらず、個々の役のちょっとした表情や何気ない仕草だけで、今誰を演じているかが観ているだけでハッキリと分かる。その細部まで神経を配った芝居に感嘆しました。

ダイナミックに演じるショーン・カンピオンと、細かく演じながら大らかさを失わない芝居をするコンレス・ヒル。どちらも甲乙つけがたい素晴らしい芝居を見せてくれます。この２人以外の配役は想像できないと思うほど全ての役にスパッとはまってる。そう見せる２人がまた凄いです。コンレス・ヒルが演じ分ける、ハリウッド女優がチャーリーにすれ違いざまサンドイッチを渡すなんて場面は、大爆笑しながらも上手いなあと唸らされました。

全編このように２人の演技がマイムを交えてハイテンションで続いていくのですが、観ている方の想像力を刺激する舞台作りがかなりツボでした。多分、作家は最初から２人芝居を想定して脚本を書いていったと思うのですが、２人だけで演じていて無理なくスムーズに進んでいくのも観ていて混乱させない要因だったと思います。この芝居は２人の役者の職人技を見せるだけでなく、後半ちょっとした悲劇を見せたり、ハリウッドを皮肉ったりと横糸で見せる物語もいい具合にスパイスとして効いています。批評で多く言われていたこの辺りが弱いというのは確かにそうかもしれませんが、前半のハイテンションな芝居があるからこそ淡々としたシリアスな部分がクッキリ浮かんでくるのだと思います。このシリアス部分をあまりのめり込んで描いていくと、全体のバランスが崩れるんじゃないかなと。見終わって爆笑しただけではないものが一筋残る、、、それでこの芝居は十分素晴らしいのだと思います。

１０分の休憩を含んでの２時間半。ラストまでスパッと突っ走る舞台に、こちらも全ての動き、セリフを見逃すまい、聞き逃すまいとググッとのめり込んで観たお芝居でした。爽快感のある疲れが残りますが、こういう疲れ方はすごーーーく気持ちがいい！（★★★★★）