ファントマ『三蔵』（スズナリ）（★★☆）
作・演出：伊藤えん魔
出演：美津濃あわ／浅野彰一／伊藤えん魔／盛井雅司 他
物語：『西遊記』をベースに天界と仏との戦いを描いた活劇。
前半はギャグ満載。後半は非常にシリアスに展開される物語。えん魔さんがパンフレットで“下調べはかなりした”と書いているように、凄く濃い内容のお話だったと思う。しかしちょっと長いかも(＾＾；； 。中盤、ちとダレてしまいました…。名前だけ出てくる神々や妖怪に、ちょっと混乱…。もっと知ってると更に面白かったんだろうなあ。西遊記ものってチャウ・シンチーの映画しか観てないし(^^;; 。
役者では鉄心波を演じた盛井さんが相変わらず良い味でいいです(^^)。三蔵を演じるあわさんは、物語をググッと引張っていく役が流石に上手い。ギャグも相変わらず好き(^^;; 。孫悟空を演じる浅野さんもパワフルで暴れん坊で、でも仲間思いのところがある悟空を上手く演じてます。やっぱり好きな役者さんだわ(^_^)。
作：アーサー・ミラー
演出：林清人
出演：仲代達矢／小宮久美子／高川裕也／金子和 他物語：かつては有能なセールスマンだったウィリー・ローマン。が、今では仕事の成果が上げられなくなり、息子達との間にも問題を抱えて追いつめられていく。そんなローマンと家族の物語。劇作家ミラーの代表作。
いい話しなのです。物語にググッと入り込んでいけるストーリー展開がやはり秀逸。どんな演出でも、役者でもそれなりに見せてしまえるホンなのではと思ってしまう程、完成度の高い脚本だと思う。
役者さんでは妻リンダをやった小宮さんが優しくはかなげでありながら、強さも持ち合わせたリンダで良いです。ブロードウェイでトニー賞を獲ったエリザベス・フランツとちょっと似た感じの方ですね。息子二人も良かったのですが、もっと押しが欲しかったかなと。もう一つ何か足りない、、、と思わせるところが勿体無い気がします。
ローマンの兄役の中山研。この役、ローマンに多大なる影響を与えてるという点で、凄く重要な人物だと思うのです。未知の人物的な存在感の出し方が上手いなと思ったのですが、もっと強烈なインパクトがあっても良かったかな。
この役を切望していたと言われる仲代達矢。全編パワフルに演じきるのですが、しかし間の取り方が上手いですな。でも台詞回しに何となく違和感覚えたのですが……うぬう。
演出はとてもシンプルです。もっと冒険してもいいのではと思うくらい素朴。入れ子になっているストーリーも淀みなくて分かりやすいです。平坦にも見えてしまうけれど、戯曲が力強いので飽きさせる所もまるでないですね。いや、ほんと凄いホンだわ。
作・演出：泊篤志
出演：寺田剛史／武石守正／北村功治／門司智美 他物語：ヒマラヤ近くの架空の国にある宿。韓国、日本の旅行者と現地で働く人々。そこに現れた、カメラマン志望の若い日本人旅行者。日本を否定しながら否定しきれない日本人たちと、自分の国に誇りを持ちつつ日本に憧れも抱く現地の人たち。共に宿で生活するうちに打ち解けてくるが、そこにラジオから一つの事件が伝えられる。
タイトルと紹介文に惹かれて観に行ったのですが、私が思ったのとちょっと毛色の違った芝居で最初戸惑いました。いい話しだとは思いますが、あまり新しい感じはなかったかなと。カルチャーギャップや人種間の問題等、ハードなテーマを割とサラリと描いているので重く感じない所が良いのだけれど、それがちょっと物足りないと感じてしまう面もあるかも。でもこういうテーマにしては目線がとても優しげで、心地よかったです。
劇団が作ったというこの架空の国の言葉が、ちょっと韓国の言葉と似ていて面白かった。こういう抑揚ってやっぱり日本語と似てる。あと宿である舞台セットがとてもステキ！調度品なんかもいい感じだったです。
作・演出：角ひろみ
出演：岡知美／宇田尚純／角ひろみ 他
物語：幼馴染みのなおと涼子。翌日に小学校の同窓会を控えた風の強い夜にかつての同級生たちが遊びにくる。彼女たちは。。。
ラストに向かってそれまでのストーリーがあるという感じで、観ていて最後に「をを〜」となりました。主人公なおの喪失感が控えめに全編を覆うのだけれど、途中はギャグ満載で楽しくて、最後にストンと落として、すし詰めの客席だったけれど、全然窮屈には感じなかったです。
役者ではなお役の岡知美さんが良かったです。目線の先に何かを探しながらもがいている様が痛々しいけれど、未来があって欲しいと願いたくなる女の子を等身大に演じていて好感度大。
客演の宇田さんも良かった。格好良くて、優しくて、素敵な先生。こんな先生いそうだなと思わせる役作りでステキ。押しの強さも相変わらず。テレながらギャグやるところも(^^;; 。こういうところの、なんとなく不器用っぽくみえるところが可愛いすぎる(*^^*)。芝居心はすっごくある方だと思うので、細々とでいいから芝居を続けて欲しかったな(T_T)。でもまた帰ってきてくれますよね！
作・演出：西田シャトナー
出演：保村大和物語：天下統一を目前にした織田信長。居城・安土城の裏山に落ちた落雷の調査に自ら赴く。そこにあったものは、これまでに見たこともないようなモノが散乱している小さな部屋のような四角い箱だった。調査を進める信長の家臣たち。そこで豊富秀吉は驚くべき書物を発見する。それは『チャート式日本史』。歴史書だった。
形を変えて上演されてきたこの芝居。３回目の今回は、なんと一人芝居！凄い数の登場人物がいるのを一人で演じきれるのか？と思ったのですが、出来るものなんですね(^^;; 。初見だとちょっと内容的に厳しいかもと思わなくもないですが、演じきった大和さん凄いわ。照明、音楽なしでも音が聞こえそうな、明かりが見えそうな気がするのはやっぱり何回も観てるからなのかな。信長が本能寺の門を開け放った時に、光が見えた気がしてちょっとドキッとしました。
キャラメルボックス『風を継ぐもの』（サンシャイン劇場）（★★☆）
作：成井豊・真柴あずき
演出：成井豊
出演：細見大輔／岡田達也／菅野良一／岡田さつき 他物語：時は幕末。新選組に入隊した甚助と兵庫。時代の流れに翻弄されていく新選組の中で、京都の治安を守ろうと走り回っていた頃、池田屋事件をきっかけに沖田総司と共に二人はある事件に巻き込まれていく。
やっぱり好きな話しです。全体の流れが居心地良くて分かりやすい。初演と殆ど変わらない作りだけれど、台詞を幾つか変えてある程度でしょうか。それがちょっと説明過多になってるようで惜しいかな。さらっと流してもよかったかもと思ってしまう。この辺は好みでしょうけど。初演の残像が残り過ぎちゃってるのが良くなかったかも。でも大きな流れを損うことはないので、印象が変わるというところまではいかないです。
初演と同じ役を演じるのは沖田役の菅野さん、つぐみ役の岡田さん、土方役の大内さん。やっぱり菅野さんがいいです。沖田役は本当にハマリ役。真っ直ぐな瞳がさわやかな沖田像を作り出していて良いです。「私の心は私にしか分からないんだ！」と叫ぶ菅野総司をまたナマで観られたってのはやっぱり嬉しい。
シェイクスピア・グローブ・シアター・カンパニー『リア王』（東京グローブ座）（★★★★）
作：ウィリアム・シェイクスピア
演出：バリー・カイル
出演：リア王...ジュリアン・グローバー／ゴネリル...パトリシア・ケリガン／リーガン...フェリシティ・ディーン／コーディリア...トニア・ショーベ／道化...ジョン・マッケネリィ 他物語：領地を分割して３人の娘に与えて退位をしようとするブリテン王リア。娘達がどれだけ自分を愛しているかを聞くが、自分を愛していると言った２人の娘に裏切られ、荒野を彷徨うことになる。一方、グロスター伯爵も庶子エドマンドの策略で長男エドガーを追放し、グロスターはエドマンドに裏切られて両目を失って荒野を彷徨うことになる。
力ある役者の力強い芝居を堪能。本当に“芝居を観る”為の舞台だった気がします。照明効果を使わずにここまで芝居をみせることが出来るのってやっぱり凄いし、それを演じてみせる役者も凄い。
前回の来日公演『お気に召すまま』では面白そうだってことで、１階の平土間立ち見の券を買ったのですが、流石に３時間は疲れてしまって(^^;; 。面白かったけど、終わった後の疲れが凄かった。その時も照明効果は使われてなかったと思うけれど、今回は客席上の照明を太陽光に見立てていて時間が経つにつれて微妙に暗くなっていくという懲り方。
照明効果を使わない舞台は観たことあったのですが、客席が明るい舞台を観たことって無かったので、最初はちょっと戸惑いました。１幕の途中までは本当に明るくて、客席部分が明るいと舞台に集中できないものだと思っていたのですが、そんなことは全然なくて舞台が進むにつれてズンズン集中して観てました。
リアを演じたダニエル・グローバーの力強い演技が本当に素晴らしい。前半の生き生きとした演技、そして落ちていくリアの悲哀。胸の奥にグッと来るものがあります。狂言回し的な役回りとして面白かったのがエドマンド。エドガーは登場シーンの弱々しさから一転して強く逞しくなるラストとの対比が、成長のあとを鮮やかに見せてくれる。
リアをクッキリと浮き上がらせて、なおかつ他のキャラクターの姿もちゃんと描いた演出もとても良かった。久々にのめり込める舞台を見せて貰いました。