『トゥルー・ウエスト（True West）』

サークル・イン・ザ・シアター
　　　4/29（土）14:00〜 1階C列222番
　　　リー：フィリップ・シーモア・ホフマン／オースチン：ジョン・Ｃ・ライリー
　　　5/3 （水）14:00〜 1階D列116番
　　　オースチン：フィリップ・シーモア・ホフマン／リー：ジョン・Ｃ・ライリー

作：サム・シェパード
演出：マシュー・ワーチャス

舞台装置＆衣装：ROB HOWELL／照明：BRIAN MacDEVITT／音響：JIM VAN BERGEN／舞台監督：WILLIAM JOSEPH BARNES

＊キャスト＊
オースチン/リー：フィリップ・シーモア・ホフマン／オースチン/リー：ジョン・Ｃ・ライリー／ソウル・キマー：ロバート・ルポーン／母：セリア・ウェストン，ロイス・マーキル

オースチンとリーは日替わりで公演

《物 語》

砂漠で生活をする野生味あふれる兄リーと、良き家庭人でもある脚本家の弟オースチン。母親の留守の間、その家を管理するオースチンの所にリーが転がり込んでくる。リーのアイデアである西部劇を共同で脚本にしていくうちに二人は…。

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フィリップ・シーモア・ホフマンとジョン・Ｃ・ライリーがリーとオースチンを役替りで演じるこの芝居。それぞれの個性の違いがハッキリと出る、とても興味深いお芝居でした。そのどちらも凄く良くて、二人の演技をみているだけでワクワクしてくる芝居。

戯曲を読んだ時のイメージはフィル＝オースチン、ジョン・Ｃ＝リーだったのですが、最初に観たのはフィルがリーを演じるバージョン。

フィルはリーを何とも破天荒な人物として作り上げていて、もうやりたい放題(^^;; 。その一つ一つの行動が突飛でもう大笑いの連続でした。癇癪を起こしたり、自分を押え込むのに必死になったり、また缶ビールをあける、タイプを打つ、電話番号をメモから探すなんていう何気ない行動なんかもむちゃくちゃ可笑しいのです(^^)。椅子が揺れるほど笑った(^^;; 。表情を一つも見逃せないすっごく楽しい役作りで思いっきり笑いのツボにハマってしまいました(^o^) 。酔っ払い演技がやけに上手くてマジで酔ってんじゃないかしらと思っちゃいましたよ(^^;; 。

あまりに激しい役作りで(笑)、やりすぎギリギリかもと思わなくもない。でもその線を微妙に越えない（私の感覚ではありますが）のは間がバツグンに上手い演技センスと、フィル自身が持っている“味”でしょうか。押しと引きのバランスが凄く上手い。舞台役者なんだなあとつくづく思いました。

オースチンのジョン・Ｃは、これが意外なほど似合っていてビックリでした。突っ走るフィルを上手く受け止めてるライリー。このバランス感覚の素晴らしさは流石だと思う。妻子のいるオースチンのキャラクターがライリーに重なるのか堅実な役作りで、それだけに後半リーと立場やキャラが逆転するオースチンの可笑しさ、面白さ（怖くもあるかも）がクッキリと見えてくる。役作りに安定感、そして安心感のあるオースチンです。

役替りで観たライリーのリーは、フィルほど破天荒な役作りではなくもっとリアルなリー。適度にワイルドで、オースチンが兄の生活を否定しつつも、その奔放な生活にどこか憧れを抱いているのがわかる気がする兄貴。そんなリーを等身大に演じるライリーは戯曲を読んだときのイメージとぴったり重なる感じでした。

そしてフィルのオースチンは、こちらもまたこだわりの役作り。異様に几帳面なオースチン像を作り出していました(;^_^;)。物が真っ直ぐに置いてないと気が済まないし、机とか床がちょっとでも汚れるとササっと拭く。それが後半ガラっと変わる鮮やかさ。素晴らしい。

　

リーがタイプライターをゴルフのクラブで叩き壊したり(！)、オースチンが近所からトースターを大量に盗んできて(^^;; 、そのすべてのトースターでパンを焼き（むちゃくちゃいい匂いが劇場中に漂うのです〜〜お腹が空いてたら地獄…〜〜）、一枚も食べることなく(涙)最後にはそれを床にぶちまけリーが踏みまくる(^^;; という目が乾くようなビックリな展開が待っているのですが、それらが全体から浮き上がることはまるでなく、最後まで緊張感タップリに語られていく凄く楽しいお芝居でした。
（★★★★4/29）（★★★☆5/3）