ユージン・オニールの深くて切ない大人の人間ドラマ。成熟した落ち着きと年輪を感じさせながらも、一筋縄ではいかないジムとジョシーの関係がオニールらしい。舞台の殆どはフィルの家のセットで占めてます。役者が動くのはその前の空間と家の中だけ。家の中の動きは窓からしか観ることは出来ません。殆どが玄関前の芝居。
２時間半強をその１場面だけで見せるので、目先が変わらず途中ちょっとダレるかなという所が前半あったのですが、後半の緊張感を保ちながら描くシンプルな演出は、役者の演技を最大限に引き出していて見事。
役者さんの中ではジョシーの父親フィル役のロイ・ドトリスが素晴らしいです。儲け役ではあるのですが、人の良さとユーモアを持つ悪戯っ子のような心優しい父親として演じていて見事な演技をみせてます。ジョシー役のチェリー・ジョーンズは、父親といるときの皮肉っぽくて男らしい雰囲気(^^;; と、ジムとの間に見せるフッとした寂しさと優しさを持った表情、そして時折見せる勝ち気さとの表現が上手い。後半のジムを包み込む母性の優しさは、父親の人柄と呼応するようで観ていてこちらも包み込まれるような感じを受けました。
ジムのガブリエル・バーン。そのリアルな役作りがジムとガブリエル・バーンその人と重なり合っているようにもみえて素晴らしいです。この役作りだけで、このジム役の大部分が成功なのではと思わせるほど。この役は見ている方としては感情移入も難しいし、その気持ちを理解するのもなかなか厳しい人なのですが、ガブのリアルな人物造形によって、ジムの背景がクッキリと浮かび上がってきているような気がします。英語力不足の私でも、ジムの話す過去の話し（自分と母親の関係）がはっきり映像として脳裏に表れてくるのですから。あきらめたような笑顔と、諦めきれないような寂しげな表情が胸を打ちます。映画のガブも素敵ですが、舞台上のガブは更にステキ！きっと舞台好きなんだろうなあ。
それにしても、オニールの芝居は舞台にのせると見事に輝きを放ちますね。勿論、良い演出とそれに答える役者がいてこそでしょうけれど。（★★★）
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