◆ハウルの動く城（日本）◆
とても意欲的な作品だと思う。でも気合いが少し空回りしてるかも(汗)。特に後半バタバタと話が進んでしまうのは勿体無いし、キャラクター描写が薄いのは意外だった。特にハウル。いいキャラクターなのに、なんとなく中途半端。ハウルの複雑な感情があってこそのソフィーだと思うのだけど。しかもキャラクターの想いがこちらに伝わってこないので、声が浮いてしまっている。これが最大の問題だと思う。今までは著名な俳優を使っていても、キャラクターがしっかりしていたので声が浮いていると感じることはあまりなかったけれど（上手い下手は別にして）、今回はキャラクターより俳優の個性が先に来ていると感じてしまった。
◆ハムナプトラ２／黄金のピラミッド（アメリカ）◆
いやあ、お腹一杯(^^;; 。どこまで行くんだ一体って感じでした。序盤から見ごたえタップリすぎて、何とか後半まで身体が持ったってな状態(笑)。。。なので驚きのスコーピオンキングも、「ま、いっか」なんて思えちゃったりして(^_^;;。しかしキャラクター増え過ぎ…。誰が誰やらっていうより、要らないんじゃん？っていうキャラ多かった気がします。もうちょっと絞った方が良かったのでは。前作からのキャラは個性的で楽しかったけど、母は強しと言ってもエブリン強すぎ(^^;;
。でももっと出番無いのかと心配してたハナーさんが、案外出てたのでちょっと嬉しかった。やっぱ可愛いわ〜f^^;。ブレンも相変わらず可愛格好いい！あとアーデス・ベイが更にいい味出してていいですね。
前作は、エジプトが舞台でこれだけ楽しい作品ってなかったなあと思って凄く好きだったんですが、今回はあんまりエジプトらしさがないかも。名所は幾つか出てきましたが…。でも発掘の楽しさがあんまりなかったし、何よりアヌビス神が敵って、、、かなり悲しい(涙)。死者の守護神なのに〜〜（だからか…）。古代エジプトには他に悪っぽい神がいるから、違うのにして欲しかったなあ。カッコイイ山犬だったからいいけど＞おひ(^^;;
。。。と色々言いつつ結構楽しんだ私は香港映画ふぁん(爆)。
◆ハリー、見知らぬ友人（フランス）◆
ラストがじわじわ怖い。しかしあの展開でこういう最後になるとはちょっと思わなかった。これはしかし感想書きにくいですな(^^;;
。何気なくネタばれしてしまいそうで。。。全体的に好きな映画なのですが、もう少しコンパクトに出来たかもと思わなくもないです。ダレる所というのがあるわけではないのですが、何故そう思ったんだろう。でももっとギュッと詰めた方が緊迫感あったかなと。とはいえ、雰囲気はあるし、話しの持っていき方も上手くて好きです。ハリウッドでリメイクされたらどーなっちゃうんだろう、、、。ちょっと心配(笑)。
◆ハリウッド的殺人事件（原題：Hollywood
Homicide）（アメリカ）◆
何とも言えない可愛いハリソンさん♪不動産売買にも手を出しているLA市警の刑事を楽しそ〜うに演じてます。相棒はヨガのインストラクターの顔も持つジョシュ・ハートネット。こちらもいつになく軽々しい役柄。しかも俳優志望の刑事。明け方、突然起き出しては芝居の台詞の稽古をするジョシュがとっても可愛い(^^)。「ステラ〜、ステラ〜ぁ！！！」(^^;;。彼女がベッドの中でウンザリしてたのがまた楽しい(笑)。
メインストーリーはクラブで殺されたラップグループを追う内に音楽業界の裏側に行き着いて、、、というもので、捜査ものとしては脚本はユルいし、人物描写も甘いのですが、この映画はそれよりもハリウッドで働く刑事をハリソンさんとジョシュでライトに描くということに主眼を置いているような気がします。とは言えライトコメディとしてもユルかったりするのが泣けるのですが(苦笑)。でも可愛くて楽しそうなハリソンさんを大きな画面で観ていると、そんなことはどーでも良くなってしまうのがハリソンさんふぁんの正直な気持ちだったりするのです。（2004年正月第２弾公開予定）
◆巴里の恋愛協奏曲（フランス）◆
何とも可愛い映画。しかし前半はちょっと退屈だったf^^;。物語が大きく転がっていくと、そのゆったりとしたペースに慣れてきて楽しめたのですが、それまでがちょっと辛かった。辛かったのは俳優の歌もなのですがf^^;。全員が同じくらいのヘタさだったのでダメージは少なかったですが、もうちょっと上手い俳優を使ってもよかったのでは(^^;;
。でも衣装とセットがゴージャスでとても素晴らしくて、そしてラストは大円団。スッキリと劇場を出られました。
◆ピエロの赤い鼻（フランス）◆
もっと物凄く泣ける映画かと思っていたけれど（何故か予告編の方がウルウルきた…）、ベースはコメディで、そこにジンワリ泣ける要素がある映画でした。大げさでない押さえた演出が良い。まい・アイドル・ブノワ(*^^*)は30分以上しないと出てこないし大きな役ではないけれど、本人が出演を熱望しただけあって表情の締まった良い演技してます。ノースリーブ姿も引き締まっててステキ(^_^;;。
◆光の旅人 K-PAX（アメリカ）◆
ここのところ、観終わった後、脱力するような映画が多かったケヴィン・スペイシー。でも今回は久々のヒットかも。新鮮味はないけれど、昔懐かしいスペイシーがここに！という点でファンとしては嬉しい復活（？）。あとはキレ役に戻ってきてくれれば嬉しいのですが。休養明けの映画に何を選ぶか興味のあるところです。頑張って頂きたい(笑)。
ストーリー展開はちょっとごちゃごちゃしている感はありますが、ケヴィン演じるプロートが本当にK-PAX星人か否かという部分をミステリーっぽく進めていくところと、プロートとジェフ・ブリッジス演じる精神科医との関係、プロートと患者との関係を、大げさにならずにゆったり描くバランスは良かったと思います。その分、どっちつかずになってしまった印象を与えるかもしれないけれど、ただのヒューマンドラマにしなかった所は面白いと思いました。
ケヴィン・スペイシーは、こういうとらえどころのない怪しい人物をやるとやっぱり楽しい。催眠術にかかる演技はちょっと演りすぎに見えるけど、こういう涙目ケヴィンはやっぱりいいのだ(笑)。しかしK-PAX星人、そんなに簡単に催眠術にかかってしまっていいのでしょうか(笑)。更に後半のスプリンクラーで手を洗うシーンでちょっと涙目になってしまった私はヤバイかもしれません(^^;;
。でも久しぶりに良い雰囲気で演技してるケヴィンを観た気がします。更に受けの演技をするジェフ・ブリッジスが良かったことが、この映画を地に足のついたものにしている最大の要因でしょう。いい芝居してます。
◆ヒトラー・カンタータ（ドイツ）◆
東京国際映画祭’05
主人公の女の子に少しも共感できなかった…。こういう映画は辛い。というより登場人物全てに良い印象のない映画でした。それでも２時間映画を持たせる力は凄いと思うけれど、実在の人物の話しでないなら、もう少しステキな所があってもいいと思うのだけれど。凄く硬い映画でした。ヒトラーに思い入れている主人公があるきっかけですっかりヒトラー熱が冷めてしまうのですが、そのきっかけがとっても俗っぽい。ヒトラー熱はその程度なのだということだろうか。熱し方も怖いが（パレードでヒトラーがチラッと振り向いてくれた〜ってだけで卒倒する女…）、冷め方も怖い。
◆ヒトラーの贋札（オーストリア）◆
ナチスの贋札作りに協力させられたアドルフ・ブルガーの著作『ヒトラーの贋札 悪魔の工房』が原作。
主人公は贋札作りで有名だったサリーことサロモン・ソロヴィッチ。ブルガーは印刷技師。この二人を演じるカール・マルコヴィクスとアウグスト・ディールが良い。マルコヴィクスの不適な面構えが、狡猾でしたたかなサリーを見事に表現していて存在感があります。生き残ることを第一に考えて上手く立ち回り、どこか冷めた考え方をする現実主義者のサリー。「今日の銃殺より、明日のガス室」という考え方をしているくらいドライだけど、でもこれは最高に重い言葉。世渡り上手なサリーは冷たい人に見えるけれど、でも仲間だけは裏切らない。意見が対立するブルガーを見捨てないし、同国人のコーリャの病気を治すためにナチスの幹部に取り入ることもする。この人間臭さがとても魅力的。
アウグスト・ディールは明日の命さえ分からない中でも誇りを失わないブルガーの強い心を演じていて、こちらも印象的です。お洒落なイメージが強かったアウグスト・ディールだけど、こういうテロっとした姿も似合う。実際のブルガーさんは、「こういう強さを持ちたかったけれど、とてもじゃないけれど無理だった」とインタビュー記事で答えていて、その現実がどれほど過酷だったかを思うとずっしりと重いものを感じます。
ラスト。カジノで大金をすったサリーに「不運な人ね」と女性が言う。不運だったけど幸運でもあったサリー。お札なんてただの紙切れ。。。ビーチでタンゴを踊るシーンが、物悲しくも美しくて、とても印象的でした。
◆ビッグ・フィッシュ（アメリカ）◆
ユアンむちゃくちゃ可愛い〜！あんな愛らしいユアンなら、不思議世界と現実が交錯してても全然違和感がない。ユアンと一緒に旅をしていた印象です。父と子という普遍的なテーマをこんな風に不思議な感覚を交えながら描いて感動させてくれるなんて、ティム・バートン映画じゃないみたいだけど、物語に大きな広がりを感じさせてくれる映画は見事。ビリー・クラダップの素直な心の動きの表現にウルウルしてしまう。地味だけど良い役者だ。
◆ビューティフル・マインド（アメリカ）◆
オスカーの方程式にぴったり当てはまった映画だったのかなという印象が強く残った映画。間延びする脚本（特に後半）が脚色賞を取ったのも何でだろうと不思議だったのですが、原作と大分違い脚色した部分が多かったらしい（アメリカでは実際のナッシュ氏とはかなり違うという報道があちこちであったようですが……。しかもそれを流したのがオスカーでのライバル社という噂もあったりして、周辺の方が騒がしかったよう）。しかしそれでもこの映画が良かったかと言われれば、疑問符が付いてしまう…。
ノーベル賞を取るほどの理論を確立し、長い間病で苦しみ、それを克服したジョン・ナッシュ。でもこの映画は、その事実を表面だけサラッと撫でただけで終わってしまったような気がします。理論の確立を丁寧に見せられても素人の私にはサッパリ分からないだろうけれど、気が付かないうちに理論が確立されてた(^^;;
。病の苦しみも、ナッシュの妄想を描くことに終始してるし…。妻の愛と言っても、それも具体的なことは殆ど見せず、、。
この映画で良かったのは俳優の演技だけと言ってもいいかもしれない。ラッセル・クロウは『インサイダー』の素晴らしさには及ばないけれど、暴走する内面を上手く引き出しているし、ジェニファー・コネリーも強い女性を美しさを失わずに演じていて上手い。そしてポール・ベタニーの飄々とした演技と存在感。監督の功績は、ベタな展開をさせながら彼らの演技力を失わせなかった事なのかも知れない。
◆ビヨンド・アワ・ケン（香港）◆
第17回東京国際映画祭のアジアの風部門の作品。香港の新聞には９月半ばに撮影開始！と書いてあった作品ですf^^;。ティーチ・インで監督が「準備に時間を多く使った」と言っていたので、撮影はかなり快調に進んだと思われます。しかし本当に間に合うのが凄いわ(^^;;
。
観終わって最初の感想は女は怖い(^^;; 。でも元カノと今カノが彼を微妙に追いつめていく所が楽しいし、失敗を沢山して微妙に友情が芽生えてくるストーリー展開も上手い。ダニエルが良い人でも悪い人でもなく、普通の男の子を演じているのが新鮮だった。「こういう役をやりたかった」と言っていた生ダニエルは、とっても格好良くてラブリ〜♪
◆ビヨンド the シー（アメリカ）◆
スペイシー、120分弱の映画の殆どで歌いまくってます(^^;;
。本編でも足りないのか、エンド・クレジットでも歌い上げてます(^^;;
。いいのか、それで……と思わせるほど(汗)。
ボビー・ダーリンの生涯を描くこの作品。ボビーの私生活よりステージ生活に重きをおいています。製作、脚本、監督をやっているのがスペイシーなので、そんなに歌いたかったのか…とクラクラしてきますが、念願の企画ということで本人も気合い入ってたのでしょう。ちょっと空回り気味ですが(^^;;
。
少年時代のボビーと現在のボビーが対話するところから映画は始まります。15歳まで生きられたら十分と言われた幼い頃。それでもボビーはその倍の年まで生きた。人生を振り返る課程で幼い自分と対話し、太く短かった人生を楽しく華やかな想い出として昇華させようとした描き方は、新鮮ではないけれど面白かった。
スペイシーはとにかく歌、歌、歌です(^^;;
。あーんどダンス（ちょっとへっぴり腰(爆)）。往年のミュージカル映画のようにカメラ前で歌い踊るという趣向は面白かったけど、ちょっと笑ったです(^^;;
。ミュージカルでブロードウェイデビューを狙ってるのか？怖すぎ。しかし最近、ふつーの役が多いので、前みたいに癖のあるアクの強い役もやって欲しいな。この春、舞台でやった『ナショナル・アンセム』ではキレキレの役だったようですが。
◆ファイヤーウォール（アメリカ）◆
普通のお父さん、ハリソンさん。でもやっぱり強いね(^^;;
。パソコンをカタカタやってるより、アクションやってるほうがやっぱり似合ったりするし。ポール・ベタニーの現金強奪計画が用意周到なのか、穴ありまくりなのか、なんだかよく分からないのですが(泣笑)、ベタニーとハリソンさんの駆け引きをもうちょっと見たかったなあというのが正直なところ。トントンと話が進んでしまい、脇を上手に使っていないところも気になる。メアリー・リン・ライスカブはよかったけれど（眉間のしわの寄せ方が『24』と一緒だ(^^;;
)、彼女のことが好きなボビーや、ロバート・パトリックはもう少し使ってあげたかった。そう言えば、ベタニーの相棒役が誰かに似てるなあと観てる間ずーっと思っていたのですが、いまだに誰なのか思い出せない…(泣)。
◆不完全戀人（台湾）◆
北京の映画スタジオ。主演男優が帰った後、監督が追加撮影をしたいと言い出す。憧れの主演女優を相手に代役を務めたのは小道具係り。何度か一緒に演技をするうちに二人はお互いに惹かれ会うが、２人の主演俳優を噂にして話題を集めたいプロデューサーの考えに反発した女優が、小道具係りと撮影所を飛び出す。台湾の歌手、ジェフ・チャンのアルバムにインスパイアされて作られた作品。
ジェフが映画をプロデュースする、しかも音楽を全面的に出した作品を。まさかミュージカル？う、歌い踊るジェフ！？ええーーーーーっ！！この作品の事を聞いた時は、こんなことを思ったアホな私でしたが(^^;;
、出来上がった作品はジェフのアルバム（「做ｲ尓的男人（英語タイトル：Be
your man）」）の曲を作品全体に使った、若い二人の瑞々しい恋の話しでした。歌入り、インストと色々あって、曲を聴いているだけで幸せな気分になる映画でした♪
主役の二人には日中ハーフの阿部力くんと新人のシー・クー。誠実な阿部くんの真っ直ぐな瞳が印象的。シー・クーちゃんもクラシックな雰囲気を持ちながら可愛くて、二人の恋を応援したくなってしまう。ジェフは映画監督の役。出番はそれ程多くないけれど、助監督との掛け合いも楽しく、とぼけた雰囲気満載の美味しい役どころ。ボケボケしてそうで、実は周囲に目を配る鋭いところもあるって役所も素敵♪やっぱりプロデューサー兼務だから、脚本も書いた実際の監督（D.J.チャン）も気を使ったのかしら(^^;;
。素のジェフ（というかコンサート等で観るジェフ）と、役が半々に出た感じの演技で、ファンとしては観ていて楽しいジェフでした。ティーチインかトークショーか忘れましたが、阿部くんがやったような役なら断るけど、いい役があったらまた映画に出たいと言っていたので、また映画に出て欲しいわ〜。「映画をきっかけに歌手である自分のアルバムに興味を持って欲しい」と言っていたのがジェフらしい。
◆ブラックホーク・ダウン（アメリカ）◆
ソマリアの内戦を終結させるべく、国連平和維持軍として派遣された米軍が撤退を余儀なくされた一因と言われる一日の出来事を、ドキュメンタリータッチに描く作品。
映画はアメリカ軍の視点を中心としていますが、そこには感情を殆ど排除したカメラが現場を淡々と追っていく形で描かれていきます。ドキュメンタリータッチの画面は非常に迫力があり、生々しく目を背けたくなるような場面が多くあります。視点が米軍兵士の側にあり、そこからソマリアの民兵を描いているので、彼らの描写はとても軽く見えます。しかしバタバタと倒れていくソマリアの人たちを観ていると、戦争に正義という言葉なんてないんだという思いを強く持ってしまう。
題材からすればドラマチックに描くことが出来る要素が沢山あるにも関わらず、監督の視線はそこに踏み込んでいかず、あくまで冷静で突き放しているように見えます。ソマリアの人たちを深く描かなかったように、視点となる米兵個人の背景も殆ど描かず、目の前にある現実を容赦なく画面に焼き付ける。自分の目に見える出来事しか把握できない兵士達の不安は、一体どのくらいのものがあるのだろうか。下手な反戦映画より、戦争の怖さをまざまざと見せつけられます。あの現場に行きたいと積極的に思う人は、あまりいないのではないだろうか。
◆ブロークバック・マウンテン（アメリカ）◆
何という風格のある映画なのだろうか。ブロークバックの雄大な姿がそう見せるのか、アン・リーの静かだけれど逞しく、客観的だけれど優しい目線がそう見せるのか。どっしりとした大きさを感じさせる作品です。やっぱり家族、父子のあり方を描かせたアン・リーは素晴らしいのだと改めて思う。『ハルク』のことは忘れることにします(^^;;
。ま、あれも家族と父子を描いていたのだろうが…。エンドクレジットの最後に「シェン・リーに捧ぐ」とありましたが、お父さんですね。厳しく、大らかだったお父さんに励まされたアン・リーなので、この文字を見ただけでグッと来てしまいました。
イニスとジャックにとって不幸だったのは、ブロークバックでの日々が余りにも幸せで密度が濃く、人生の全てがあそこにあったと言ってもいい程、瑞々しく輝かしい時を過ごしてしまったことなのかもしれない。そしてその幸福の日々は決して人には言えない幸せ。山を降りてジャックと別れた後のイニスの慟哭が切なく、心に重荷を負ってしまったかのような姿が余りにも哀しい。
しかしヒース・レジャーってこんなに上手かったんですねえ。気がつかなかったよ…。ジェイクはキャラ的にはイニスの方が合うような気がしたのですが、見事にジャックを演じてみせるあたりに幅を感じさせます。彼らの妻を演じたミシェル・ウィリアムズもアン・ハサウェイもとても良かった。平凡な幸せを望んでいただけなのに、少しずつ歯車が狂っていく様を、ゆっくりと、でも確実に見せていく。
ラストのイニスが発する「Jack, I swear.」という台詞。いつも内向きだったイニスが見せる真っ直ぐな言葉が、重く、深く心に響いてきます。
◆フロム・ヘル（アメリカ）◆
切り裂きジャックを題材にした映画。しかしあそこが関わってたという設定にしたのは凄いわ。都合良く映像が見えちゃったりして、謎解き部分は力技すぎて無理があると思うけど、街角に立ってる娼婦達の雰囲気とか、１９世紀末の退廃した欧州の雰囲気が全編に出てて、その部分が面白かった。
しかしジョニー・デップは１９世紀のヨーロッパの雰囲気に馴染みますね。イギリス俳優に囲まれても全然違和感なく溶け込んでる。部下を演じるコルトレーンさんは、どことなくホワンとした感じの出し方が上手い。イアン・ホルムは迫力あるし、スーザン・リンチがまた雰囲気ばっちり。ジェイソン・フレミング、、、(涙)。いや、上手いんだけど役が泣けるわ。
◆ブリジット・ジョーンズの日記（アメリカ）◆
原作読んでから観たのですが、かなりソフトになっている印象。ブリジットに共感は出来ないけど「分かるなあ」というくらいの距離間は感じられたので。原作だともっともっとブリジットの内面がよく分かるし、ダニエルやマークに対する態度とか感情の変化も細かく描かれている。映画ではこの辺りを原作よりはサラリと描いているので、肌触りは柔らかくなったような気がします。それでも「こんな人いないだろ、やっぱり」と思ってしまうのですが。。。でも、その誇張した主人公を薄く薄くスライスしていくと、「分かるわ、それ」と思えてしまうのが怖い(泣笑)。
レニー・ゼルウィガーは、ブリジットをさっぱりと潔く演じていて好演。ダニエルのヒュー・グラント、面白すぎ(^^;;
。最高です(^_^;;。そしてマーク・ダーシーのコリン・ファース(*^^*)。もお素敵すぎ〜♪背筋をピンと伸ばした立ち姿のスマートさも格好良いし、階段を下りてくる姿も麗しくステキでございます(*^^*)。芝居も相変わらず手堅くて、あの何とも言えないじんわりくる存在感がとっても好き。
このキャストで５回シリーズくらいのTVドラマで観たかった、、、というのは贅沢かな。
◆ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月（アメリカ）◆
今回は原作を読んでいる途中で観に行きましたが、やっぱりソフトにはなってるんでしょうね。原作の方は最初から見事にドタバタだったf^^;。前作からのキャラが全員戻ってきてくれてるのは嬉しい。両親のエピソードがあまりなかったのが残念だけど（原作にはありそうな予感）、マークが沢山出てきてくれたのが良かった。やっぱりいいわ〜、マーク。そして今回もお騒がせ男なダニエル。あの登場シーンが笑えたf^^;。やっぱりTVシリーズで堪能したい話しだわ。誰かやってくれないかしら。
◆ベティ・サイズモア（アメリカ）◆
脚本の流れが凄く上手くて楽しい(^^)。ドタバタしてるのに、結構スッキリ観られるのがちょっと不思議な気がするくらい。出てくるキャラがまたみんな何気に濃ゆい(^^;;
。でもその濃ゆいキャラクターをキッチリ使い切ってる感が楽しいです。
しかしレニー・ゼルウィガーはむっちゃ可愛いですな。アニメキャラクターにしたいくらいだわ(笑)。クリス・ロックがハマっててちょっと好きかも。モーガン・フリーマンは重厚そうな軽い役。もっとテレが合ったほうがいいのになあと思っていたのですが、ラストで納得。アリソン・ジャーニーがイヤらしくって楽しくてエエ感じです(^^;;
。
◆ベルリン、僕らの革命（ドイツ）◆
怒れる子供達…ささやかな社会への抵抗がやがて大きな力になっていくと信じるヤンとピーター。こういう鬱積したエネルギーというのはいつの時代にもあるもの。しかしその手法がユニークと言うか笑えるし可愛いf^^;。彼らは“エデュケーター”と名乗って金持ちの家に侵入し、家具の配置を変えて留守中に人が家に帰ったという恐怖を家主に与える。そこにメッセージを残し、それが報道されることで事態が大きくなることを望んでいる。よく考えるとかなりの時間と能力を使うが利益は地味と言う、むちゃくちゃ地道な活動だ(汗)。でもそれだけに何となく現実味を感じさせる。
ヤンを演じるのはダニエル・ブリュール。髭面で憂鬱そうに歩くブリュールくんは結構新鮮。でも親友の彼女を好きになってしまって悩む姿はやっぱりブリュールくんだ。ハチャメチャなことをやってしまうけれど、大人と政治論を戦わせてそれが様になってしまうのもブリュールくん。自然でスマートな演技は相変わらず良い。好きになってしまったユールを演じるのはユリア・イェンチ。ピーターがいない間にヤンを好きになってしまうユー留だけれど、ユリア・イェンチが演じると全然イヤな女の子に感じられない。大変なことになってしまう事の発端はユールなのに。ユリアは美人じゃないけどキュート。ダニエル・ブリュールと川で遊ぶ所なんてとっても可愛い。この２人はお互い自然な演技をするので、見ていて微笑ましくなってしまうわ。ピーターを演じるスタイプ・エルツェッグ。彼女をとられてしまう損な役回りだけどとっても男らしいのだ。ピーターの行動にちょっと涙目になった私…。ハーデンベルクを演じるのはブルクハルト・クラウスナーが素晴らしい。ユーモアがあって楽しい人で、ヤン達が心を許しそうになってしまうのがよく分かる人物を好演。
ラストは裏切りと反撃。大人と怒れる子供達、どちらもしたたか。
◆変身（ロシア）◆
東京国際映画祭
カフカの変身をほぼ忠実に映画化したロシア映画。セリフはロシア語だけれど、原作の舞台であるプラハの街で撮影されているようです。ラストのカペル橋がとても印象的。行きたい！
虫に変身したザムザの姿は、俳優が素のままで演じています。監督は舞台演出家でもあるワレリー・フォーキン。ザムザを演じるのは映画の仕事も多い舞台俳優エフゲニー・ミローノフ。そんなこともあって、とても演劇的な映画です。元は舞台劇でその映画化なのでそれも当然なのですが、舞台版の主役は違う方だったです。日本にも来たけれど、観に行かなかったんですよねえ。。。映画を観て激しく後悔しました(T_T)。これは舞台で観ると更に凄かったかと思われます。
ミローノフさんは熱演。原作では冒頭から虫になってたと思いますが、映画では人間ザムザが最初に出てきます。なんかみょーな人です(^^;;。これも狙いなのでしょう。そして虫になりきってる演技は本当に上手い。でも人間なんだというのが全面に出ているので、ザムザの心の内が分かるようで哀しくなります。人間で居るときより人間的な眼が印象的。それでも家族の思いも分かるだけに（こちらの方が立場的に感情移入できるし）、胸の奥をチクチク刺されてるような感じでした。はあ、やっぱり舞台で観たかった〜(涙)。
◆抱擁（アメリカ）◆
小品だけど非常にまとまりのある良い作品。現在と過去のパートの行き来もとても自然で、違和感無くすんなり物語に溶け込んでる。主演のグウィネスはこういう地味目の役柄の方が断然いい味が出ると思う。そして過去の詩人を演じるジェレミー・ノーザムとジェニファー・エールがとても良い。ジェニファーの品の良さはこういう役柄だと本当に際だって凄く好印象。受けるジェレミーはどの映画でも空気みたいにふんわりしていて安心感がある。どの映画でも良い人〜って印象しか残らないような気もするけど、でもやっぱりステキなんだなあ(^^)。
そして、まい・らぶり〜・トビー・スティーブンス(#^^#)。野心家トビーはその育ちの良さそうなトビー自身の醸し出す雰囲気で、そんなヤなヤツには見えない。役柄があまり描き込まれてなくて中途半端な感じだから、キラッとしたところも出せないまま終わってしまった印象もありますが。でも品があると言えば、やっぱりトビーも品があるんだよなー(^_^)。そしてここが大きなポイント、痩せてます(笑)。オネーギン観てから、あのトビーの姿が目から離れなくて…(涙)。演技とか役所以前に一番気になってしまう(泣笑)。
◆ホワイト・ライズ（アメリカ）◆
スーツ姿のパリッとしたジョシュと、カジュアルなジョシュを楽しめるお得な作品。２年前に突然自分の前から居なくなってしまった恋人を、偶然見掛けた所から始まるサスペンス。見掛けた女性は本当にその彼女なのか。探し始めたジョシュの前に現れたのは…。
先読み出来てしまうようなストーリーだけれど、サスペンスとして観ても面白い…って矛盾してるか(^^;;
。でもジョシュの一途な想いは観ていて応援したくなるし、こういうのはハマリ役かもしれない。そして他人を追いつめながら、自分を追い込んでいってしまうローズ・バーンの哀しい眼が印象的。マシュー・リラードの底抜けな笑顔が可愛い♪…けどちょっと怖い(^^;ゞ。ダイアン・クルーガーはどっから見ても綺麗だ。しかし寒い映画だったわf^^;。よりによってあんなところで待ち合わせしなくても(号泣)。私だったら例えジョシュと待ち合わせしてても１分で帰るなf^^;。……邦題がとても素敵。
◆ボーン・アイデンティティ（アメリカ）◆
去年、香港で観たけれど、また観てしまいました。同じ映画を何度も観ない人なのですが、クリス・クーパーの指パッチンをもう一度スクリーンで観たくて(^^;;。やっぱり格好良いなあ(笑)。惚れるわ、苦くてf^^;。そしてこの映画やっぱり好き〜(^^)。アクション映画だけど欧州ロケだから画面から薫る雰囲気が独特だし、マット・デイモンのアクション姿も新鮮。ダグ・リーマン好きなのかしら＞私。『GO』も好きだったしな、、、香港映画っぽくて。そ、そうか、何か波長が合うと思ったら、どこか香港映画のかほりがするのかも。マット・デイモンの最後のアクションなんて凄くそんな感じ。といってもアクション監督は香港人じゃないけど。
◆ボーン・スプレマシー（アメリカ）◆
続編で１作目と同レベル、それ以上のレベルに達した稀な映画。やっぱりこのシリーズ好きだわー。今回は指パッチンがなかったのが残念だったけど(^^;;
、前作のキャラクターもキーになっているし、新たなキャラクターも活躍の場が沢山ある。ガブリエル・マンが出ていたのは嬉しかった。まあ最後は…(涙目)。
マットは孤高の元エージェントが板についてきました。アクションにキレもあるし、動きが綺麗。自分の動きを冷静に瞬時に判断できるところを自然に演じられるのも良い。派手になりそうな人物をリアルに感じさせるのはマットだからでしょう。３作目がありそうなラストもいい。作って欲しいわ。
◆香港国際警察／NEW POLICE STORY（香港）◆
まさかジャッキーの映画で泣かされるとは(涙)。重案組（新ポリスストーリー）も暗かったけれど、今回は泣く演技が多くてアクション以外でこんなに苦しそうなジャッキーは初めてかもしれない。アクションは少なくなったけれど、バスアクションなんて懐かしいものも見せてくれて感動。
そしてニコはMAXな可愛さ！！シリアス演技に徹するジャッキーの代わりに、ニコがコメディ部門を担当。ドジっぽい、つーか本当に普通っぽい青年を演じているので等身大な感じも可愛い♪ジャッキーに負けずアクションも沢山あるのですが、ニコのアクションは無我夢中というか、なりふり構わずってところがとっても可愛くて好き。なんだか可愛いって文字ばかりの気もするが(^^;;
、ホントに可愛いんだもの(^_^;;。キャラクター設定もキッチリしていて、ラストのエピソードも良い。
ダニエルはシリアスなジャッキーを敵に回すのだから、こちらもシリアス。キャラクターは複雑とまではいかないけれど、背景も描かれていてダニエルも丁寧に見せてます。お父さんとの関わりのところでの演技が秀逸。特にラスト近くで見せる表情は感動的です。
久々復帰のチャーリー・ヤンはやっぱり年取りましたな。可愛かったけど。
全体的にはベニー・チャン映画なので暗い陰が色んなところにあって飽きさせないし、爆発も相変わらず凄い。しかし花火使いすぎなのでは(笑)。
◆ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ（イギリス）◆
聞いてはいたけれど、やっぱりショック…。ジャクリーヌ像が音を立ててガラガラと崩れていく、、、という程、私はジャッキーの大ファンではないけれど、それでも十分に衝撃的。夫を共有って、、、う〜ぬ。それはさておき、純粋に映画として観ると、少女時代を描いた後、ヒラリーとジャッキーそれぞれの視点で同じ時代を描き分けて、「あの時彼女はこう考えてたんだ」というのが後から分かって面白かった。天才ジャッキーと、その天才振りが分かる才能を与えられた凡人ヒラリー。ヒラリー役レイチェル・グリフィスが描き出す静の情感が感動的。
ジャクリーヌ・デュ・プレがこの映画と全く同じ人物像だとは思わないけれど、今この映画を世に出すというのはなんとも…（暴露本（じゃないけど）を出すのも凄いが）。ヒラリーの旦那さんって存命中じゃないのかなあ。バレンボイムは現役バリバリだし（沈黙を守ってるって噂ですが）。良い映画だとは思ったけれど、何となくシックリこないものが残るのでした。