今年で４回目となったドイツ映画祭。例年は春にやっていて、今年はアナウンスがなかったのでなくなっちゃったのかなあと嘆いていたのですが、東京国際映画祭協賛映画祭として今年もやってくれました♪秋の映画祭シーズンでの上映ということと、朝日ホールの半分ほどのキャパでの上映ということで、私が観に行った映画は殆ど座席が埋まっている状態でした。

観た映画は６本だったのですが、どれも楽しくて面白い作品。一般公開してくれると嬉しいんだけどなあ。最も期待していたのは、原作が大好きな『クラバート』。ダニエル・ブリュールがトンダを演じるということで期待大だったのですが、ダニエルのトンダは優しさと温かさを持っていてとても良かった。複雑なトンダの心理状態を繊細な表現力で演じてくれるので、トンダが出ている場面はほぼトンダしか観ていませんでした(爆)。スクリーンでこの映画を観られたのはとても嬉しいのですが、日本公開は決まっていないということなので、是非どこか買って下さい～。ダークな魔法ものだけど、胸にグッと来る作品なので。じゃないとドイツ版DVDが出たら買っちゃいますよ。ドイツ語さっぱり分からないけど(T_T) 。ダニエルだけ観てるからいいと言えばいいんだけど＞おひf^^;。

今年はいつになくゲストも多彩で、中でもフロリアン・ルーカスが来てくれたのはとても嬉しかった。とっても気さくな方で、ロビーでファンのサインや写真撮影、会話なんかにも気軽に応えてくれてました。これは他の俳優さんや監督さんも同じなのだけど。本国ではスターな方々がこんなに気さくでいいんだろうかというくらいでした。来年もこの映画祭が継続されますように。

耳のないウサギ（原題：Keinohrhasen）

　監督：ティル・シュワイガー
　脚本：ティル・シュワイガー／アニカ・デッカー
　出演：
　ティル・シュワイガー（ルド）／ノラ・チルナー（アンナ）
　マティアス・シュヴァイクヘファー（モーリッツ）

　2007年作品　115分

三流新聞社の記者で、人生を楽しく暮らしていければいいと思っているルド。恋愛も同様で、毎日違う相手と付き合い、あと腐れなく（本人は）別れる日々。相棒はカメラマンのモーリッツ。ある日、サッカー選手が婚約することをつきとめ２人で取材に出かけていくが、裁判沙汰の大失態を演じてしまう。裁判所で300時間の社会奉仕を言い渡され、奉仕先は保育園。しかもそこで保育士をやっていたのは、子供の頃ルドがいじめていた幼馴染で堅物のアンナ。正反対の性格の二人の保育園での日々が始まる。

ティル・シュワイガー監督、主演のラブコメディ。ティルは出番が多くてほぼ出ずっぱりなので、この作品で両方をやるのは大変だなあと思いながら観ていたのですが、そう言えば前に観た『裸足の女』もほぼ出ずっぱりだったので、こういうの慣れてるのかも(^^;; 。ルドはセクシーで楽しいけど適度にいい加減で、悪い人じゃないけど良い人でもない。どこか憎めないところがあるとか、ナニゲにキュートだったりも、、、あんまりしない(^^;; 。子供といるときは可愛いけど♪つーか子供が可愛い。ブルー役の子、超可愛い～。お持ち帰りしたいくらい(^^;; 。パンフレットに子供と共演してると書いてあったので調べたら、ティルの子だったー。

この映画の最大のお目当てはモーリッツ役のマテアスくん♪『心の鼓動』以来、久しぶりの再会だよ～。何だかとらえどころのない妙～な子だったが＞モーリッツ(汗)。でも相変わらず可愛かった♪しかしビジュアルが微妙にデビッド・アンダース（TVドラマHEROESのアダムとかエイリアスのサーク）な気がしたのは気のせいでしょうか。そしてユルゲン・フォーゲルが出てきたのもビックリ。しかも本人役。彼は画面に出てきただけで目を引く迫力満点な役者ですな、流石に。しかし私がこの映画で一番興奮したのは、そのユルゲン・フォーゲルが登場した何かのプレミアで、レッドカーペットに出てきたダニエル・ブリュールくんだったのは内緒だ(^^;; 。めちゃくちゃ格好良かったよーーーーー(*^^*)。２秒くらいしか出てなかったけど(泣笑)。

ベルリンDJ（原題：Berlin Calling)

　監督：ハンネス・シュテーア
　脚本：ハンネス・シュテーア
　出演：
　パウル・カルクブレンナー（イカルス）／リタ・レンギュエル（マティルデ）
　コリンナ・ハルフォウフ（パウル教授）／アラバ・ヴァルトン（コリンナ）
　メーガン・ゲイ（アリス）

　2008年作品　109分

ベルリンの人気DJイカルス。毎日街から街へとツアーをする日々。ある日友人から買った薬物が粗悪品だったことから意識不明になり病院に担ぎ込まれる。リハビリ施設に入るが、外に抜け出しては薬をやる日が続く。そんな中でもニューアルバムは高い評価を得るが、ある時、若い夜勤の研修生を巻き込んで病院に酒を持ち込みパーティーをする。病院の薬を大量に飲んで再び意識不明になるイカルス。それでも音楽への情熱は最後まで持ち続けるのだが。

主演したのは実際にDJをやっているパウル・カルクブレンナー。監督がティーチ・インで何度も言っていたのは、このイカルスとカルクブレンナーは違うんだということ。確かに普通に観てしまうと、この映画は彼の自伝的映画なのかと思ってしまう。しかしあんな生活してたらマジで身体ぼろぼろになりそうだが(汗)。でも私が一番気になったのは映画の中でイカルスが常にサッカーのシャツを着ているということ。しかも各国代表ユニだったり、ビッククラブのユニだったりするのに、ドイツ国内のユニはなかったような。気がつかなかっただけかなあ。しかしアルヘンユニってのは“あり”なんでしょうか(^^;; 、流石にオランダユニはなかったが(爆)。

ウェイブ - あるクラスの暴走（原題：Die Welle）

　監督：デニス・ガンゼル
　脚本：デニス・ガンゼル／ペーター・トラヴァルト
　原作：ウィリアム・ロン・ジョーンズ
　出演：
　ユルゲン・フォーゲル（ライナー・ベンガー）／フリードリッヒ・ラウ（ティム）
　マックス・リーメルト（マルコ）／ジェニファー・ウルリッヒ（カーロ）

　2007年作品　83分

高校の特別授業で独裁と無政府主義それぞれを題材にした授業が行われる。水球チームのコーチで体育教師のライナーは無政府主義のクラスを持ちたかったが、独裁のクラスを担当するように言われる。授業の初日、現在では独裁はあり得ないと言う生徒たち。ライナーは自分をベンガー様と呼ばせたり、行進をしてみたりと具体的な行動をさせることで、ファシズムとはどういうものだったかを生徒たちに体験させていく。全員に白いシャツを着せ、会の名前を“ウェイブ”と名付けたり、挨拶の形を決めたりと行動がエスカレートするうちに、生徒たちに奇妙な一体感が生まれ、そこから学校を越えて会が一人歩きするようになる。そしてこの授業に危機感を持つ生徒も出てくるのだが。実話を元にした物語。

ドイツでしか有り得ない映画、、、と思ってしまうけれど、この映画の元になった事件はアメリカのサンフランシスコで起こったもの。こういう妙に生真面目な一体感を持つのはドイツ人と日本人だけかと思っていたけど(笑…って笑えないが)、こういう類の事件がアメリカであったというのは驚き。カリスマ的な先生がいて、大人びていてもまだまだ青い(笑)高校生で、制服と規律を用意すると、こんなに簡単に落ちていってしまうというのはやっぱり恐ろしい。でもこれは高校生だからというわけではないのだろう。同じドイツ映画のes（エス）では大人たちが簡単に落ちてしまったのだから。これも元はサンフランシスコの実験だったけど。

ユルゲン・フォーゲルはドイツではとても人気のある俳優ですが、日本ではその作品はなかなか観られない。この映画ではライナー役をカリスマ溢れる力強い演技で見せていて、こんな先生だったらついて行っちゃうよなあと説得力があります。それは演技を越えたところにある、ユルゲン・フォーゲルという一人の俳優の持つ大いなる力がそうさせているような気がする。ほんと魅力的な俳優だ。生徒たちもそれぞれとても魅力的。監督は何千人もオーディションして選んだということだけれど、みんな良い表現してた。因みに私のお気に入りはイェンス役の子→です(^_^; 。またどっかで出会いたい子だわー。

ティーチ・インもとても面白かった。監督も語りたいことが沢山あったみたいで、1時間くらいやってくれても良かったくらい。でもドイツの学校では毎年ファシズムについての授業があるというのは凄いなあと思う。生徒の中には「またかよー」と思ってしまう子もいるというのも素直な反応なのだろうけれど、それでもそういう授業をずっと続けていくのだから。“ドイツ人はファシズムの行き着く先を知っている”と力強く答える監督の言葉が胸にずっしりと響きます。